国民健康保険料の金額計算における「総所得金額」と「上場株式等の配当所得・譲渡所得」の関係。
国民健康保険料の計算方法や料率は、お住まいの各自治体により異なります。
しかし、その計算方法の式には前年所得を基準とした「所得割」なるものがほぼほぼ含まれています(全市区町村を確認したわけではないため、絶対とは言い切れませんが^^;)
この所得割ですが、確定申告において「上場株式等の配当所得・譲渡所得」の申告を行なった場合には、その金額に影響が出てしまう可能性があり、注意が必要です。
国民健康保険料の計算式(愛川町の場合)
愛川町の場合には、次の計算式により国民健康保険料が計算されます。
①所得割+②均等割+③平等割=国民健康保険料総額
①所得割=※1(総所得金額ー住民税基礎控除額)×(医療分6.28%+支援分2.12%+※2介護分1.65%)
※1「(総所得金額ー住民税基礎控除額)」は加入者1人1人につき計算し合計したもの
※2「介護分」は40歳〜64歳の方のみ加算。均等割、平等割においても同様。
②均等割=(医療分20,400+支援分6,600+※2介護分7,000)×加入人数
③平等割=(医療分24,000+支援分8,600+※2介護分6,000)
(注)上限金額……所得割63万、均等割19万、平等割17万
②均等割、③平等割についてはすぐに計算可能ですね。
一方、①所得割ですが総所得金額という曖昧な単語が含まれています。
この総所得金額は、
- 給与所得
- 雑所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 総合短期譲渡所得 総合長期譲渡所得
- 分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得(土地・建物等を売却した時の所得で、特別控除後の金額)
- 株式等に係る譲渡所得
- 一時所得
- 山林所得
を合計したものです。
上場株式等の配当所得・譲渡所得を確定申告すると総所得金額が増加してしまう
上記の総所得金額は、所得税の確定申告を行なった際の所得金額が用いられます。
所得税の確定申告において、源泉徴収が行われる特定口座における上場株式等の譲渡所得・配当所得は確定申告不要制度を選択することができます。
申告不要=確定申告書へ記載を行いません。
このため、確定申告不要制度を選択した上場株式等の譲渡所得・配当所得については、国民健康保険料を計算する際の総所得金額に含まれないこととなります。
一方、
- 申告分離課税により上場株式等の配当所得と譲渡損失を損益通算する
- 過去の上場株式等の譲渡損失について繰越控除を受ける
- 配当所得を総合課税により申告し配当控除を受ける
これらの適用を受けるためには、申告不要制度を使わず、それぞれの所得について確定申告書へ記載を行う必要があります。
結果、上場株式等の配当所得・譲渡所得の金額が、国民健康保険料を計算する際の総所得金額に加算されることとなります。
この影響を避けるために、住民税について「上場株式等に係る配当所得等の申告不要制度」があります。
- 所得税について、上場株式等の配当所得・譲渡所得を記載した確定申告書を提出する
- その後住民税の納税通知書が送付される日までに、市区町村へ配当所得・譲渡所得について申告不要を選択した住民税の申告書を提出する(市区町村により提出する書類が異なる)
二度手間となりますが、上記手順を踏むことで国民健康保険料を計算する上での総所得金額を増やすことなく、所得税申告において上場株式等についての損益通算・繰越控除・配当控除を受けることができます。
なお、令和3年分の確定申告から所得税確定申告書上に、住民税について、
「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」
欄が設けられました。
こちらに◯を記入だけで、住民税の申告書を提出することなく適用を受けることができるようになります。
二度手間解消となり大変ありがたいですね。
まとめ
国民健康保険料を計算する際の「総所得金額」と、所得税確定申告における「配当所得・譲渡所得(上場株式等)」の関係性について見てゆきました。
会社で社会保険に加入している方については影響ありませんが、個人事業主や既に現役を退かれた方などは意識しておいた方がよいかと思われます。
資産運用が身近になったことで、過去にはほとんど生じることのなかった(考慮する必要のなかった)捻れなのかもしれません。
<明日に向けて>
明日が期限の申請を1件完成させなければ。
その他、研修や登録がいくつか。今週末までを上手く使って消化してゆくことにします。